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『兵庫県の姫路ですが、クリニックに来て頂けますか?』。
こんなお電話を頂戴し、その話の中身をお聞きして私はビックリ仰天・・・。
『良い音で音楽を楽しみたい!』。
そんなシンプルな望みを叶える為に、ある人に任せてシステムを一式揃えたのだそうです。
『果たして今の状態がどの程度のものなのか?診断して欲しい』。
そして、『更に良い音にする為のアドバイスが欲しい』。
「そのシステムの内容とは・・・?!」、
「ナ・ナ・ナント!ノーチラスのオリジナルです」。
それを8台のマランツPA02でドライブ。
トランスポートはP-0s、クロックはG0s、コンバーターにD70。
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これらをミニコンポを買うかのごとく、ポンと一度に買い揃えたというのです。あまりにも豪快な話なので、初めはからかわれているのではないかと思ってしまいました。『どこかに腕の立つその道のプロはいないものか?』とネットで色々と調べていて、
「カイザーサウンド」に辿り着いたそうです。
そして、息子と二人で早速お伺いする事になりました。
その音は予想通りの『細かい事など言うな!』といわんばかりの豪快な音です。
正直言ってノーチラスの確立したイメージとは程遠い!。
業務用アンプの影響を受けて、ワイルドな面が覗いているのです。
ノーチラスは完璧なまでのスピーカーとしての完成度が売りのはず。
性別はどちらかというと、女性のイメージとして浸透しているのではないでしょうか!?。
聴かせて貰った経験はありませんが、特に評論家の傅氏が好む様なサウンド、
(女性ボーカルが品良く鳴る清楚なスピーカーというイメージが)強いのではと思います。
しかし本来スピーカーはLoud
Speakerと呼ばれるものです。
今鳴っているこれこそが本来の姿に近いんだとさえ思いました。
今回の彼女は、いや彼は暴れん坊のような面を見せているのです。
底知れぬ可能性を秘めたものに感じました。
思わずニヤッと私達二人は顔を見合わせました。
しかし、今鳴っている音を聞いた時に多くの人は『No!』というのではないでしょうか。
かけて頂く曲を気をつけていますと、ロックやジャズ、ブルースといった男臭い音楽が多いのです。その点ではオーナーのKさんの好みが出ていて、この方向で伸ばして差し上げるのが一番のようです。これからどのような方向の音作りを提案させて頂くのか、そこらあたりのところをシッカリと話し込みさせて頂きました。
『とにかく何も分らないので、カイザーさんの良いと思うようにやってみて下さい』と全てを一任されたのです。
責任ありますが、ここからが「カイザーサウンド」の腕の見せ所です。
当日はACケーブルの最新型AC-1S(8NLimited)3本と、ナイアガラJr.を二つ持って来ていましたので一番良く効く所に入れて聴いて頂きました。先ず初めにチャンネルディバイダーだけにACケーブルとナイアガラJr.のタップを使いました。
「これは効きましたネェ!」。
この効果にKさんは愛好を崩し、
『全部に入れたらどないなるんやろう?』。
「当然全てのコンポに入れるべきでしょうね!!」。
「全員に同じように栄養を送り込んでやる事をしないで、
これだけのチームが上手く機能する事は有り得ません!」。
「何を止めてでも今回の第一歩は電源ケーブルを一式揃えて欲しいと思います」。
「このスタート台が構築出来ないと、今回のクリニック作戦は成り立ちません!」
と半ば脅迫じみた言い回しをしてしまいました。
その数たるや「LimitedのACケーブル」19本に「ナイアガラJr.」のタップが4個です。
Kさんの口が開くまでに3秒と掛からなかったでしょう。
『ほな、それで行こか!』の一言で決まりです。
恐るべしは大阪商人の決断力!。
そうなんです、Kさんは今でこそ姫路ですが、根っからの大阪の人なんです。
約1ヶ月の制作期間を貰いましたが、
正直言って、今回のような数のケーブルの同時製作はもう二度と出来ないでしょう。
全ての部材の順番を管理して作ったのですから、
本当に精根尽き果ててしまいました。
とにかく19人兄弟の戸籍簿順に作られたACケーブルなんて、
世界中どこを探しても存在しないでしょう。
私の渾身の力と気合を込めて完成させた「シグネチャーモデル」ですから。
ここに世界最高のパフォーマンスを発揮するケーブルの誕生です。
これは私が作ったのではなくKさんの心意気が作らせたのです。
久しぶりに燃えました。
人の心を動かす力とは本当に凄いものですね。
納品の日がやって来ました。深夜の2時に東京を出て姫路にはお昼前に到着です。約束の時間までに2時間ほどありましたのでリラックスした気分で姫路城見物です。桜の木の下はピンクのじゅうたんを敷いたようでした。大分散り掛かっていましたがまだ少し桜の花が残っていました。
お城の中は全て無垢の木で出来ているせいで、「呼吸するのが凄く楽!」、そんな感じです。特に私の場合若い頃のタバコの吸い過ぎで肺気腫気味ですから、酸素の濃淡が敏感に分るのです。それにしてもこの天守閣は世界文化遺産だけに本当に立派です。中央には丸と四角の2本の大黒柱が下から上まで1本通しで貫通してあるのにはビックリです。もっとも現在の物は途中一ヶ所接がれております。
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姫路城見物を終え、肩の力も抜けたところでここから目と鼻の先にあるKさんのところへ参ります。当日は車の運転だけに私は専念して、Kさん宅へ着いてもセッティングは何一つしないで全ては息子に任せっきりです。せいぜい言われた順番通りにケーブルを手渡すぐらいです。
狭いし、熱いし、ラックの裏に回って結線するのは大変です。
「どのケーブルをどの順番に」というのは、
当然信号の流れの順に結線すれば良いので問題は有りませんが、
どこをどう這わすかに神経を使うのです。
これで「音楽の生き死にが決まってしまう」と言っても過言ではありません。
格闘する事約2時間、今度は息子が大きなため息をついてラックの裏から出てきました。
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『いや〜疲れた!!、参った!、参った!』。
『でも、どんな音が出るか楽しみだな〜』。
息子の場合は出て来る音は既に頭の中で聞こえているといつも言います。
聞く前から分っていると。
ある部分冷めたところがあるのですが、珍しく先ほどの言葉を口にしたのです。
その音とは、ローゼンクランツのリファレンスの音とそっくりですが、
スケールがこちらの方が全く上です。
「速いんです」、「揃っているんです」。
とに角音楽は、1にも2にもタイミングが全てです!。
さらに、沢山の機材が入っている重たいラックをほんの2〜3センチ前に調整します。
幸いにも下がカーペットですから難なく動いてくれました。
振動のタイミングを揃え「カイザーウェーブ」に乗せる為です。
これは、もはやステレオの音ではないですね。
サックス、ドラム、ピアノ、ベース・・・。
どれをとっても生音以外の何者でもありません。
何年振りかに興奮する音です。
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